2005年 10月 12日
UK版Marie Claire 11月号のショーンの記事訳、全文です。分けて順次あげていたものとちょこちょこって言葉が変わってます。 Marching with Sean Beanのコチラにもアップしています。 「いつもアウトサイダーのように感じてきた」 UK版Marie Claire 11月号 過去3回の結婚をし、ハリウッドのホットリストのうらやましがられるような立場にいるショーン・ビーンが未だに探しているものを見つけられないというのは信じがたい。しかしたぶんそれが彼の望む道なのだろう。 文:ハーヴェイ・マルクス 写真:ジリアン・エーデルスタイン ショーン・ビーンの演技力がもっと喜ばれるような機会はまれなのは確かだ。金曜日の真夜中近く、ロンドン北部ハムステッドの今はガラガラのWelcome Chinese restaurantで、私たちは2人とも、ちょっと疲れてだらけた姿勢で座っていた。家に帰りたいのか続けたいのかわからなかったが、2人ともそろそろ出る時間だとわかっていた。酒のビンが銀色のバケツにさかさまに刺さっていた。レストランのオーナーと1人残っているウェイトレス、そして太りすぎの金魚で一杯の水槽が、ビーンが携帯で話し始め、彼の今日までで最高の演技の一つを行うのを見ている。私にとって、それは長い夕べでついに46歳の俳優が一体なんであるのかを知った瞬間だった。 4時間前、私は彼の地元のパブで座り、もしものときのためと彼のパブリシストに渡された携帯番号に電話をかけていた。彼のしている広告(「O2. See what you can do」)について考えながら、私に聞こえてくるのは留守番電話だけだった。誘惑し、同時に脅迫する、ちょっと危険なサウスヨークシャー母音ですらなかった。違うネットワークだ。彼は既に1時間遅刻だ。 私たちが出会ったのは2、3週間前、『アイランド』のヨーロッパプレミアだった。ビーンはレスター・スクエアのオデオン座の舞台に立ち、共演のユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンの側で、ばつが悪く、落ち着かない様子だった。その晩、アフターパーティで、彼は娘のモリーと一緒だった(彼は3人の娘がいる。『Bread』の女優メラニー・ヒルとの間にローナ(18歳)とモリー(14歳)、『シャープ』でビーンの妻を演じたアビゲイル・クルッテンデンとの間にエヴィー(7歳)。彼の1回目の結婚はシェフィールド時代の恋人とで、彼がロンドンに移ってからまもなく終わった)。 ビーンはモリーの前ではタバコを吸わなかった。そして彼女がベッドに行くまでリラックスできないようだった。その後彼はサッカーの話とペットショップボーイズの『West End Girls』がいかに好きかということについて話した。そして新しいガールフレンド、27歳の女優のジョルジーナ・サトクリフの、肌にぴったりした黒いラバーのフェティッシュなドレスがダンスフロアーでの激しい動きに太ももで裂け、上がっていくのを楽しんでいた。 次に私が彼に会ったのは「マリー・クレール」の写真撮影だった。彼はプロに徹し、気さくだった。フォトグラファーが服を着たままプールに飛び込むことを提案したときは少々不安げだったが。いくつかの点で、ビーンの自己認識の意識と内気さは実際の年齢よりも若い人にふさわしいようだった。しかし、その後、『トロイ』のセットで出会った彼のヒーロー、ピーター・オトュールとランチ・デートをすると言う彼は、TVと映画でのキャリア ―『チャタレイ夫人の恋人』のセックスと『シャープ』から『ゴールデン・アイ』、『ロード・オブ・ザ・リング』のボロミア、そして現在『フライトプラン』でジョディ・フォスターと並び、『ノースカントリー』でシャーリーズ・セロンと並ぶ一連の作品まで― が20年以上のも及ぶ俳優であることを思い起こさせる。 万が一あなたが気が付いていなかったり、彼があなたに気が付いてほしくなかった時のために説明すると、彼はRADAで訓練をつんだ俳優であり、ハリウッドでの需要があり、この国の最も高給な映画での稼ぎ手の1人である。彼は報道陣が私生活を詮索することに警戒しており、だからこそ、彼の家の近くで留守番電話を聞いている私は、インタビューを受けないことにしたかもしれないと恐れた。 しかし結局野球帽をかぶって(誰かわからないようにという彼の意図とは明らかに逆効果だった)現れた彼は謝り倒した。前日の夜、ビーンは出かけ、ジョージナが新しい舞台で喝采を浴びるのを見て、ちょっと一杯やり、私がメッセージを吹き込んでいた午後と夕方、角を曲がったところの自宅のソファーでぐっすり眠っていたのだ。 手にギネスとブラックカラント(クロフサスグリ)を持ち、口にはゴロワーズを銜え、彼は言う。「うん、ジョージナ。うん。彼女はよかったよ。初日はいつも木曜日だよね。ちょっと飲みにいって、で…」 彼は正しく想像したとおりに話す。今ではもう存在しないだろうシェフィールドの石畳の通りで聞かれるような声だ。そして彼はいつも礼儀正しいが、いつも主導権も持っている。「土曜日だっていっつも思うんだよね」と彼は笑った。 女優と付き合うほうが楽なんだろうかと私は思った。女優たちの方があなたをよりよく理解する? 「そうは言わない」とビーンは答える。「男性心理を理解するのに女優である必要はない。短期的には、気分が楽かもしれない。共通のものがあるからね。ジャーナリストなら、ジャーナリストとつきあうだろう?」 私はジャーナリストと付き合うことは考えないと答えた。 「女優についてもいつもそう言ってるんだけどね。でも学習しないんだ」と彼は笑った。 今までショーン・ビーンを定義するのは簡単だった。労働者階級の少年。製鋼工の見習いとしてうまくやり、ケネス・ブラナーらと共にRADAに入学。シェフィールドユナイテッドのサポーター。80年代初頭のビリー・エリオットのよう。しかしそれは事実ではない。彼の父親は製鋼所を所有しており、16歳のショーン・ビーンは父親の後を継ぐよりも何か他のことがしたかった。彼は自分自身を労働者階級だと思っていたのだろうか。 「そうだったと思う」とビーンは言う。「でも仕事にはシルバー・シャドウで行ったんだ。ダッドは叫ぶんだ。『ショーン、行くぞ』 で、ダッドとロールス・ロイスに乗り込んで、みたいな!」(笑) 「鉄兜のブーツを履いて、坂の上で停まって、『デイリーミラー』を買って、ロールスに飛び乗る… かなり変だ」 「父親と働くのは奇妙だ。スパイかなんかのように感じるからさ」とビーンは続ける。「私は何が何でもそうではなかった。私は作業現場にいて、私の忠誠心は彼らの方にあったと思う。うーん、期待はされていなかったと思うけど、ダッドは家業をついでほしかったと思う」 ショーン・ビーンはいつも奴らの1人になりたかったが、どういうわけか、横並びを脱してしまう傾向があった。自分で認めるように、勉強に傾倒していたわけではない。16歳から19歳までの間、彼はロザラム工科大学で溶接を習っていた。しばらくすると、道の向かいのカレッジでアートとドラマを学んだ。そしてRADAに入学し、彼の仲間は彼のことを「女々しいやつ」だと考えた。 ビーンは、まだ見習い溶接工だった頃、シェフィールドのチャペル・ウォークの古本屋をうろうろし、戯曲を読み、図書館やアートギャラリーに行ったことを思い起こす。「オスカー・ワイルドの作品が好きだったんだ」と彼は言う。それからデイヴィッド・ボウイだった。痩せた白いデュークだ。「彼の音楽を通じて、他の作家に興味を持ち始めたんだ」 自分自身をアウトサイダーだと思っていましたか? 「ああ、いつもアウトサイダーのように感じていた」と彼は答える。「若いときは系統立てて説明することはとてもむずかしい。だから朝の4時まで納屋に閉じこもっていたものだった。絵を描いて、音楽を聴いていたんだ。ジントニックを何杯か飲んで、次の朝起きると「何描いてたんだ」って思ってた」 両親はあなたが何をしようとしているのか知っていました? 「ああ。ちょっとおちこぼれになっていたと思う。いや、それはちょっと言いすぎかな。みんなが私のことをアーティスティックだけどちょっと変わってると思っていたんだよ。実際そうだったし、今でもそうだ!」と彼は笑う。「なぜ何かに憧れるのかはわからない。憧れ、切望。それが何かとすっかり見定めることはできない。私にとって、それは演技だった」 ビーンはここ2年のうち18ヶ月をロサンゼルスで働きながら過ごした。彼の最新作、心理スリラーの『フライトプラン』は飛行機の中に設定され、主演は飛行中に娘が不可解にも消えてしまった母親役のジョディ・フォスターだ。ビーンが演じるのは、怒れるキャプテン・リッチである。彼は、終わりのないホテルでの夜を伴う演技の過程を、かなり寂しい仕事だと言うが、付け加える。「自分ひとりの時間を楽しんでいる。自分のしたいことが、読んだり、今日していたみたいにソファーにごろりと横になり寝てしまったり、ができるためには、一般的に、そういった時間を持つことは人によってよいことだ。一緒に引っ付いていなければならないとか、確約を得ておくとか、それに従って行動する何かを持っていると感じるべきだといっているわけじゃない」 なぜショーン・ビーンを把握するのがこんなに難しいのかが、こういった種類の発言にまさに現れている。いつも彼がこんな風に感じているのか、3回離婚した結果こういう風に彼の意識が形成されたのか、いつも不思議に思わされることになる。彼はディテールを語ることには乗り気ではないが、彼が結婚について語るとき、最初の妻と結婚したときまだたった21歳だったことを語るとき、10代の彼の素朴なロマンティシズムと生活の無遠慮なリアリティとの間の一見絶え間ない戦いを理解し始める。この内面の葛藤が彼を女性にとってひどく魅力的にしているのだと私は思う。 「結局」彼は言う。「人は愛する人と暮らす。それは素晴らしい。でも時々うまくいかないんだ。そんなものなんだよ」 しかしあまりにもソフトに見えるとビーンが考えたのか、彼は付け加えた。「今のところ、特に何も探していない。よい血統のシェパード犬以外はね。[演技]の本質は、いつも家を離れているから、おそらくよい関係には貢献しないだろう。しかし、その反面、不在が愛情を育てるとも言うだろう?だからそういう風にみている。しばらく離れて・・・くそ、私の言ってる事わかるだろ? 「でも子どもたちやなんやから離れているのは辛い」と彼は続ける。「辛いな。私には3人の娘がいる。ここ1週間ずっと一緒なんだ。そのうち1人はもうすぐ18歳で、ボーイフレンドと一緒にさっき顔を出したんだ」 で、あなたは・・・・ 「・・・・やきもちを焼いてる父親かって?」と彼はたずねた。「いや、違う。でももし彼がバカな真似をしたら、手をかける。言ってる意味がわかる?」(笑)「リハーサルしてみようか?彼は楽しい少年だよ。そして彼がローナを幸せにしているのなら、それは素晴らしいことだ。そうじゃなきゃ、私は彼のことがうれしくないだろうね、そうだろ?」 元妻たちとはみんな、仲良くやっているのですか? ビーンは劇的効果のためにちょっと静止し、ビールを見つめ、そして爆笑した。「ゴメン、ちょっとトイレに行ってくるよ!」 彼が戻ってきてから、私たちはハリウッドでの彼に関してざっと話した。自分の成し遂げたことを誇りに思っているのは確かだが、その派手さを楽しんでいるように見られることには若干決まり悪げだ。『トロイ』を撮っているときにブラット・ピットとビールを飲んだことや、レイ・ウィンストンが「素晴らしい俳優」で「自分がどこから来たのかをよくしっている」などと言うことを彼は言う。そして最近は大きなトレイラがあるか聞くと、ビーンは「彼女[フォスター]ほど大きくないけど、もちろんやたらに大きなトレイラがあるよ!どこに住んでるとおもってるんだい?幌馬車?」 しかしこの辺りまでが彼の限界だ。「有名人で自慢話をするみたいだ。言ってることわかる?」と彼は言う。 彼はサッカーについて話すほうがずっと居心地よさげだ。そしてそれが閉店時間まで飲みながら話していたことだ。レストランの最後の客になって、タクシーを呼ぶのに問題が生じるまで。ビーンはオーナーに代わって、自分でタクシー会社に電話をかけてみたが、同じ「1時間待て」という答えを得ただけだった。「見てろよ」と彼は言い、もう一度電話をかけた。電話が通じたとき、彼はすでにシェフィールドのハンズワース出身の元製鋼工のショーン・ビーンではなく、RADAで訓練を受けた俳優のショーン・ビーンだった。「そう。できるだけ早く車をまわしてほしいんだが」 彼は最も受け入れられやすい発音で言った。 彼が待っている間、私は彼が以前に行ったことを思い出していた。「訛りを聞けば、『ホイッペット犬をかってハンチングをかぶり、父親は炭鉱で働いている』って考える。それが反発したいことだろ」と彼は説明した。「でも最後にはぐるっと回って元に戻ることになる。『それが私だったんだ。それが私を作ったんだ」って考える。それが北部の精神だ」 そしてそれがショーン・ビーンだ。自分自身と他人が間違っていることを証明し、自身のルーツからいつも逃げようと望んでいるが、永遠に引き戻される。 「10分?」 彼は優雅なアクセントを保ちながら私にウィンクをし、電話の声に繰り返す。今日一番幸せそうだ。「ありがとう。素晴らしいよ」
by miyelo
| 2005-10-12 11:07
| ショーンB
|
Comments(6)
大作の翻訳、ありがとうございました。
さっそく、こちらの全文の翻訳をブログからリンクさせていただきました。 言葉による階級差別って、イギリスではまだまだ根強いんですね。 知識として知ってはいましたが、あらためてこういう話を読むと、びっくりです。
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miyelo at 2005-10-12 15:24
punktさん、こんにちは。
ご紹介ありがとうございます。 そうですね。話し方って重要ですよね。日本でも言葉の選び方でかなり判断されてしまいますよね。 そしてイギリスの階級差別は未だに残っているみたいですね。うーん、この辺の感覚は本当にわかりません。 でもイギリス英語って丁寧で好きですね。この夏イギリスに行ったときに友人と二人でCheers 同好会とlovely同好会を作ってました(いや、単にcheersとかlovelyとかを会話で使おうってだけですが。。。)
Misaさん、おはようございます。すてきなインタビューご紹介くださりありがとうございました!ショーンのルーツを彼の言葉で聞くというのは珍しく感じましたし、離婚を含めたいろいろなことが今の彼をつくってるんだと、ますますショーンかっこいいです。
自分でも訳がんばってみたのですが、難しいですね(涙)。リンクさせてくださいね!!
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miyelo at 2005-10-13 17:51
なをさん、こんにちは。
ショーン、いいよねえ。こうインタビューを読んでると、へらへらしちゃう。 リンクはもちろんOKですよ。「正解」かどうかはわかりませんが。だって、シェフィールド訛りなんてわからないし、知らない言葉結構いっぱい出てくるよ。なをさんも頑張ってね。
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hilde_von_bingen at 2005-10-13 23:21
MIsaさん、素晴らしい翻訳を有難うございました!
「あ~、そういう意味だったの!!」と何度もうなずいてしまいましたです。 私自身は、英語が半分もわからないままに読んでいたのですが、途中で挫折してしまったままでした。 ショーン自身がとてもよく理解できるような記事だったんですね。 ショーンのきちんとした発音、結構好きです。 アーサー王の朗読とか、Trouble On The Terraces(DVD)とか。 この記事を拝見して、また聞いてみたくなりました。(^_^)
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miyelo at 2005-10-14 15:24
ひるでさん、こんにちは。
この記事、面白かったですよね。ショーンの単純なようで複雑なところがうまく出ていたような基がします。 私もショーンのきれいな発音、好きですね。あの声質とよく合ってます。 Trouble On the Terraces、持ってないんです。良いですか? |
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