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2005年 10月 08日

歴史を作る – パート3:ヴィゴ・モーテンセン (2)

歴史を作る – パート3:ヴィゴ・モーテンセン (2)
2005年9月30日

歴史を作る – パート3:ヴィゴ・モーテンセン (2)_b0064176_2126676.jpg
性格描写として、『A History of Violence』は今年の映画作品の大部分より断然上を行く。それは爽快であると同時にぞっとするものであり、人間性の血なまぐさい層を剥ぎ取り、我々の最も病的で、深く、恐ろしい能力を分析するために我々のまぶたを無理やり開かせる。

このような脚本を一目見ただけでは、行間にほぼ傑作に近いものが潜んでいることをすぐさまわかるようなことはない。先週の日曜日ニューヨークタイムズマガジンのジョナサン・ディーが言及したように、「何になる権利があるよりも、どうも、実質的な映画」である。綱渡り歩きになることがモーテンセンの目にはすぐにはっきりわかった。そして脚本が真の芸術作品になるかどうか当初懐疑的だったが、まもなく彼は監督ディビッド・クローネンバーグとともに創造する喜びを分かち合う自分を発見する。

「脚本を読んだとき、面白いと思った。しかし、ほとんどの監督はこれをうまくいかさないだろうと思った。つまり、すぐに満足できるようなグラフィックや、暴力、強い感情のレベルで視覚的に面白いものをつくるだろうが、物語を語るという点からみて層の厚いものには必ずしもならないだろう。ボールにシンプルかつリアルに、本当の方法で語らせる忍耐力や意向をもっていないだろう。しかし彼に会って話したとき、私が持っていた疑問―「明らかすぎる?この方法である必要があるのか?」-で、何でも彼は既に私の先を行っていたんだ。彼は自分に同じ質問をしていて、無駄をそぎ落として作ろうと思っていることを知っていたんだ。」

実際、脚本の過程で、ストーリーをそれぞれの枠組みから性格付けをとことん絞り込んだタイトなスリラーへと変換した。

「撮影を始めるころまでには、脚本は100ページくらいから70ページぐらいへとなった。だから枠組みはとてもタイトで、とてもシンプルだ。最初から誰もが意図を知っていた。そしてその枠組みの中で、私たちは果てしなく探索することができ、自分たちをバカにしようとしたり、本当に厄介な行動や状況をかなりうまく擬態したものをしようとしたりしていた。[クローネンバーグは]人間行動をよく勉強している」

歴史を作る – パート3:ヴィゴ・モーテンセン (2)_b0064176_22252025.jpg映画の実際の暴力に関して、制作者と俳優はシーンの肉体的状況、心理的状況の双方で極端に自然主義のアプローチをとった。結果はこの監督の作品のなかで最も衝撃的なもののいくつかとなった。意味深長だが。

「とても単刀直入で、とても信じられるものであるべきだとみんなで同意していた。私たちは自己防衛コースやビデオを調べ、他の人たちと話した。とても事実に即したもので、とても直接的で、とても効果的なものだ。映画全体のストーリーテリングと同様にね。カメラで何ができるかとか格闘家のように動けるとかを見せびらかすシーンじゃないんだ。無駄な努力はあまりない。相手にできるだけ速くできるだけ近くまで行って、できるだけ早くできるだけ相手を痛めつける。原理上はとても単純だ」

才能と違いを持つデイヴィッド・クローネンバーグという監督と働くのは、このスターの目には無上の経験だった。質問の一つ一つで、モーテンセンは監督への増大する賞賛と敬意をすこしづつもらすことを許されたかのようだった。クローネンバーグがしっかりと導く手を持って『A History of Violence』を物語る手法を彼が評価していることはかなり明白だ。

「この物語を語るのに、普通の監督よりもずっと長く時間をとらせることがたくさんある。エド・ハリス―彼と父子に何かが起こった―の後のシーンのように。彼は演じつづけさせ、何が起こったのか私たちに見させる。他の監督であれば、『うーん、観客がこれに我慢できるかわからないな』と言う忍耐力や勇気はないだろう。しかし楽しむのが彼なんだ。リズムだ。彼はミュージシャンのようだ。彼はしばらくドラムソロを演奏できることをしっているし、いつ次のパートへ移動し、他の要素を入れるべきかを知っているんだ」

「たった一つになることは決してない。私たちはみんな全てなんだ。何を見せたいのか、どんな状況があなたに見せさせるのかによるんだ。材料は全てそろっている。私たちみんなだ。状況と生い立ち、ストレス、あらゆる種類のものの問題だけで、これらの材料がいかに組み合わされ、人として自分をいかに見せるかだ。他の監督であれば、もっと雇われ仕事でやってしまい、こんな男が突然あんな男になったと示すだけかもしれない。俳優が演じるとして、表面的な面では派手かもしれないが、それでは私の中にもっと考え、もっと自分の人生と関連付けさせる何かを残さない。彼は素晴らしいアーティストだ」
続く

by miyelo | 2005-10-08 21:48 | ヴィゴ訳 | Comments(4)
Commented by かづちゃん at 2005-10-09 10:23 x
さる雑誌のスキャンで「人が変わったようなトムさん」の眼の演技に
映画への期待をますます膨らませております。

こんなに様々な事を考えぬいての演技だからこそ
「あの眼」になるんだ!と訳文を読ませていただいて、
納得しています。
Commented by miyelo at 2005-10-09 12:06
aHoVでのヴィゴの眼の演技はすごいですよ。あんまり言葉で言えないタイプのようで、ホント眼で色々語ってます。すごいですよ。
Commented by Yuri at 2005-10-11 12:44 x
Misaさん、こんにちは!ちょっと体調不良でダウンしてしまい、ネット落ちしてる間にこんなにたくさんの訳をありがとうございま~す!今まとめてゆっくり読ませていただきました。

ヴィゴは、監督と撮影が出来た経験を、ほんとうに喜んでいるようですね。よかったですよね。眼の演技も、ほんと楽しみです。私、ヴィゴの眼の演技、大好きなんです。ヴィゴの眼って、ほんと語りますよね~。それが沢山堪能できるかと思うと、もう、楽しみでたまりません。
ネタばれもこれまで極力避けていたのですが、最近あまりにも楽しみでついつい色々のぞいちゃっております・・。うう、葛藤です。
Commented by miyelo at 2005-10-12 09:11
Yuriさん、こんにちは。
ええ、ヴィゴ、眼で語りまくってます。堪能できますよ。
葛藤はわかります。私も読みたくなるのを必死でシャットアウトしていましたから。でもそのおかげで先が全然わからない状態で楽しめました。Yuriさんも葛藤してくださいね~。その価値はあります。


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