Words of VM

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2004年 12月 25日

The Best American Nonrequired Reading 2004 序文(9)

そのバックパックには日記2冊、脚本2本、パスポート、読みかけの本2冊も入っていた。ノートに書かれていたストーリーや詩を失ったことが一番つらかった。2002年末のサハラ砂漠で過ごしたとても静かな一連の夜に書かれた、私にとってはいつになく長く無防備な数百ページの詩を見直し、手直しをすることを私は特に楽しみにしていた。その頃私は、様々な理由により、抽象的なイメージと子供の頃の追憶の断片を多用し、モロッコに住み働いている間に急に流れ込んできた感覚的な印象を結びつけた、広範な作品を書き始めていた。そのときのノートの分厚く白い頁は垢じみ、ウアルザザテ近くの塵のために赤く、エルフードとメルズーガから黄色く、私の手と、キャンプファイヤとタバコの灰のために茶色と灰色に染みがついており、ページの端は折られ、グリースで黒ずんでいた。そこには砂嵐、駱駝のうがい、ハゲワシ、アラブの歌、祈りへの呼びかけ、礼拝用のラグ、紅茶、コーヒー、テントの垂れぶたがあった。それはディーゼルの匂いも放っており、蝿や化石、熱波、山羊、兵士、蠍、見えざる女性、驢馬、ナツメヤシ、鳩、鷹、蝮、新しいもしくは朽ちかけの庭、墓地、街の城壁、モスク、馬屋、井戸、砦、学校の生気に溢れていた。これは長年の懸案だった埋もれた思い出の目録作りの始まりだった。植物とその名前、馬、車の事故、稲妻、ペットの蜥蜴、私の両親の口論の一部、病気、羊といった。捕まり、失われ、リリースされ、きれいにされ、調理され、川や池、湖で見つけられ、食べられ、腐り、もがき、死にかけ、死んでいる魚といった。これらのノートに見られるのは、私が得た先生達の、苦しみ、くすくす笑い、眠る、さもなくば緊急治療室やバスステーションや街角にいる、厳しい砂漠、草原地帯、氷景、もしくは都市の荒地を貫く道や足跡の名残を歩き立ち止まる警察官、子供たち、そして、年寄りたちの顔だ。ここにはおもちゃの兵隊や効果のないワイパーが、チョコレート、ワイン、アスパラガス、鹿肉、鱒、チョーク、蟻、ビッグマック、埃、タンポポの茎、甘くないイェルバマテ、鴨、ビール、雪、血の初めての味がすべてあった。

ヴィゴ・モーテンセン
『The Best American Nonrequired Reading 2004 』より

日本語訳:Miyelo

by miyelo | 2004-12-25 17:20 | ヴィゴ訳


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